【千と千尋の神隠し】神様たちの名前とセリフ一覧!ひよこ・大根・お面など

千と千尋の神隠し

宮崎駿監督の代表作『千と千尋の神隠し』。

主人公・千尋は、不思議な世界に迷い込み湯屋で働くことになります。

そこは、さまざまな姿形の神様たちがお客様としてやってくる場所でした。

この神様たちは、神道や妖怪など日本で古くから馴染みのあるものがモデルになっているんです!

神様の名前や、いったい何の神様なのか?八百万の神とはどういう存在なのか?

さらに物語と神話との関連性についてもまとめました。

それぞれのエピソードを知ることで、今まで以上に個性的な神様たちに親近感がわいてきますよ。

千と千尋の神隠し=古事記(神話)がモチーフ?

千と千尋の神隠しにはたくさんの神様が登場しています。

日本の最古の書物である『古事記』『日本書紀』にもさまざまな神様が描かれていますね。

実は千と千尋の神隠しと神話の間に、たくさんの共通点があるんです。

  1. 八百万の神々
  2. イザナギ・イザナミの神話
  3. ニギハヤミコハクヌシ=ニギハヤヒ

さっそく見ていきましょう!

1.八百万の神々

八百万の神の「八」とは数が多いこと、つまり数えきれないほどの神様がいるという意味です。

ありとあらゆるものに神が宿っているという日本古来の考え方で、神道に通じています。

昔から日本人は稲作や漁など自然と深く関わる生活の中で、自然を崇拝し神の存在を感じるようになりました。

山や海、田んぼや米粒ひとつにまで、神様は身近に存在していると考えたのですね。

千と千尋の神隠しはその考えをベースにした物語。

物語の舞台となる湯屋には、八百万の神々が疲れをいやしにやって来ます。

2.イザナギ・イザナミの神話

国を造った神様として有名なイザナギとイザナミ。

この夫婦神の神話と、千と千尋の神隠しには二つの共通点があります。

まずは神話の内容を簡単に紹介していきます。

国造りをしていたイザナギとイザナミですが、その途中でイザナミは命を落としてしまいます。

イザナミをこの世へ連れ戻すために、黄泉の国まで追いかけるイザナギ。

しかしイザナミは「黄泉の世界の食べ物を食べてしまったので戻れない」と答えます。

「相談してくるので、外に出るまで私の姿をのぞかないで」というイザナミ。

その約束を破ってのぞいたイザナギは、腐り果てたイザナミの姿を目にします。

イザナギは逃げ出し、イザナミとは離婚してしまいました。

・共通点1

千と千尋の神隠しでは、冒頭で千尋の体が透けて消えそうになるシーンがあります。

そこでハクが「この世界のものを食べないと消えてしまう」と言い、赤い実を食べさせたおかげで千尋の体は元に戻ります。

また千尋が人臭いと嫌がられるれるシーンでは「ここのものを3日も食べればにおいは消える」というセリフも。

どちらも『異世界の食べ物を口にすることによって、強い結びつきが生まれる』という点で共通していますね。

・共通点2

元の世界へ帰る千尋に、ハクは「決して振り返ってはいけないよ」と伝えます。

この「振り返ってはいけない・のぞいてはいけない」というタブーは世界中の神話で語られているんです。

イザナギとイザナミのエピソード以外にも、振り返ったせいで不幸がふりかかるという伝説はたくさんあるんですね。

幸い千尋は振り返らないという約束を守りました。

もし振り返っていたら…少しぞっとしますね。

3.ニギハヤミコハクヌシ=ニギハヤヒ

「ニギハヤミコハクヌシ」とは物語の後半で明らかになるハクの本当の名前です。

この難しい名前は、日本神話に登場する神「ニギハヤヒ」に由来しています。

千尋も「神様の名前みたい」と言っていますが、本当に神様の名前なんですね。

「古事記」によると、ニギハヤヒは大和地方の神様。

神武天皇が国を治めるためにふさわしい土地を探しにやってくると、ニギハヤヒは神武天皇に仕えるようになりました。

この話だけ見ると、川の神であるハクとの関連性は薄いように感じますよね。

しかし、ニギハヤヒという神様にはたくさんの解釈や俗説があり、謎の多い神様と言われています。

ニギハヤヒと、謎めいた少年ハクのキャラクターとを重ね合わせてこの名前がつけられたのではないでしょうか。

千と千尋の神隠しに登場する神様たちの名前やセリフ

油屋での休暇を楽しむ個性的な神様たち。

そのモデルとなった神様や、登場シーンなどをまとめました。

  1. おしら様
  2. おなま様
  3. お台所様
  4. おすびさま
  5. オオトリ様
  6. オクサレ様
  7. 春日様
  8. 牛鬼
  9. 一言主
  10. ススワタリ
  11. ニギハヤミコハクヌシ
  12. カオナシ

それぞれ詳しく紹介していきますね!

おしら様

白いふくよかな大根の神おしら様。

モデルとなったのは東北地方で信仰されている同名の蚕・農業・馬の神様です。

起源となるのは、馬に恋をした娘の悲しい伝説。

馬と夫婦になった娘に怒った父親が、馬を殺し首をはねてしまいます。

娘は馬の首に飛び乗り、そのまま空に昇りおしら様になったというもの。

作中のほんわかしたおしら様の姿からは想像のつかない悲恋ですよね。

こども好きな神様と言われていて、湯婆婆のところへ向かう千尋に付き添ってくれます。

おなま様

 

包丁を持って蓑をまとったおなま様は、秋田県のなまはげがモデルです。

なまはげは、家々を巡り厄災をはらう来訪神。

鬼のような風貌ですが、豊作・豊漁をもたらす神の使いなんですよ。

漢の武帝が連れていた鬼が、1日だけ自由をもらい里で暴れまわったという伝説が起源。

ほかにも民間伝承でいくつかの説があります。

おなま様は、橋を渡るシーンに登場しています。

お台所様

千尋がハクと橋を渡るときに前を歩いている、大きな笠をかぶったお台所様。

笠の縁から包丁や鍋などの台所用品をぶら下げています。

日本では昔から台所(かまど)に宿るかまど神が祀られてきました。

神道のかまど三神、仏教の三神宝荒神、民間信仰でも地域によってさまざまな名前や伝承があります。

日本の木造住宅では、かまどの火からまもってもらうことはとても重要だったんですね。

おすびさま

ピンクの体で葉うちわを持つむすびさま。

千尋が番台蛙に薬湯の札をもらいに来た時に登場していますよ。

むすび様は縁結びの神様。

ご縁とは、男女の縁だけでなく、人間関係やあらゆるつながりのことを指します。

千尋とハクにも深いご縁がありましたよね。

オオトリ様

頭に葉っぱをのせて船から降りてくる大きなひよこはオオトリ様。

卵のまま食べられたり、成長できずに死んでしまったひよこの神様です。

とぼけたような表情のオオトリ様にはそんな切ない経緯があったのですね…。

ですが、油屋では宴会をしたりみんなで湯に浸かったりと、精一杯楽しんでいる様子!

オクサレ様

ヘドロに包まれた巨体…強烈な悪臭…。

油屋にやってきた迷惑なお客様として登場したオクサレ様。

千尋の活躍で、オクサレ様の体に溜まっていたゴミが取り除かれます。

汚れを落としたオクサレ様の本当の姿は、翁の面のような顔と竜の体をもつ河の神様でした!

名のある河の主である立派な神様が、人間が投げ捨てた大量のゴミのせいで、誰も近寄りたがらない腐れ神になってしまう…。

現実社会の抱える問題について深く考えさせられるシーンです。

春日様


春日様のモデルは春日大社の春日神。

春日様の御札のような顔は、春日大社で行われる能楽でじっさいに使われている面と同じものです。

宮司のような姿で、宙に浮き滑らかに移動する春日様は、とってもミステリアスな印象。

ですが、河の神様が帰った後にはみんなと一緒に踊って喜ぶ陽気な一面を見せています。

牛鬼

 

鹿のような角を生やした鬼は牛鬼。

西日本に伝わる恐ろしく獰猛な妖怪がモデルです。

頭が牛で胴体が鬼、人の着物姿で現れたと伝えられています。

油屋にやってきた牛鬼は、かなりのずんぐりむっくり。

浴衣姿でくつろぐ姿が可愛らしいですね。

一言主

一言主は、一言の願いであれば何でも聞き届ける神様。

奈良県の葛城一言主神社が総本社で、「無言まいり」の神様として信仰されています。

作中ではセリフのなかで名前が出るほか、オクサレ様が来た時に避難する神様たちの中に一瞬登場。

「言」と書かれた赤い冠のようなものを頭につけています。

ススワタリ

イガグリのような体に目と手足がついているススワタリは魔法の力でススから生まれました。

ボイラー室で窯爺の元、一生懸命石炭を運んで働いています。

宮崎駿監督の『となりのトトロ』では「まっくろくろすけ」と呼ばれ、妖怪として登場していますね!

ニギハヤミコハクヌシ


ニギハヤミコハクヌシはハクの本当の名前。

白い龍の姿をしたコハク川の主です。

湯婆婆に名前を奪われ、自分の正体も帰り道もわからなくなってしまったハク。

千尋がコハク川に落ちた過去を思い出したのをきっかけに、自分の名前を取り戻すことができました。

カオナシ

 

黒い影のような体にお面をつけたカオナシ。

「カオ」とは資格のことで、「カオナシ」は資格がないという意味です。

油屋に入る資格のないカオナシを千尋が招き入れてしまいます。

砂金をばらまき、何でも飲み込むカオナシは、まるで人の欲望そのものですよね。

もともとは大人しい性格で、どこにも居場所のない悲しい存在でもあります。