【千と千尋の神隠し】カオナシの正体はサタン?名セリフとともに解説

千と千尋の神隠し

カオナシといえば、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』に登場する不思議なキャラクター。

真っ黒な体に白い不気味なお面をつけ、時には恐ろしい行動をとります。だけどどこか憎めない、愛すべき存在ですよね。

そんなカオナシが一体なんなのか、その正体を疑問に思う人も多いのではないでしょうか。妖怪?神様?それとも悪魔?

この記事では、カオナシの正体や意味に迫っていきます!

【千と千尋の神隠し】カオナシの簡単なプロフィール

まずはカオナシについて簡単におさらいし、その正体を探ってみましょう。

本名不明
性別不明
年齢不明
声優中村彰男(なかむらあきお)
性格強欲で執念深い

カオナシは、本名や性別、年齢など、基本的な情報がほとんど分かっていません。これだけ設定がはっきりしていないキャラクターは、ジブリ作品の中でもとても珍しい例です。

声優を務めたのは、中村彰男さん。カオナシの他にも、『交響詩篇エウレカセブン』のマシュー役、精霊の守り人のジュロ役など、有名アニメ作品に多く出演しています。

カオナシは千尋に異常な執着を見せました。砂金や食べ物をちらつかせるなど、あの手この手を使って千尋を手に入れようとし、逃げる彼女をどこまでも追いかけていましたよね。

その様子は、一体どんなものを象徴しているのでしょうか。

【千と千尋の神隠し】カオナシの正体にまつわる都市伝説

カオナシの正体については、ファンによってさまざまな考察が生まれています。いくつかご紹介しましょう。

1.カオナシの正体=サタン(悪魔)説

まずは、カオナシがサタン(悪魔)ではないかという都市伝説です。

サタンとは、聖書の中でイエス・キリストを誘惑した悪魔のこと。カオナシが食べ物や砂金で千尋を誘惑した行動は、まさにサタンそのものに感じられます。

千尋は最後まで惑わされることなく、誘惑を振り切ることができましたよね。そのあたりの展開まで、聖書と同じです。

決定的なのは、電車の場面。窓の外にほんの一瞬だけ、「サタン」という文字が映っています。パッと見ただけでは気が付かないようなところに入った文字が、無意味だとは思えません。ジブリの遊び心でしょうか。

カオナシは、主人公が誘惑に打ち勝って成長を遂げるための、悪魔の役割を果たしていたのかもしれませんね。

2.カオナシの正体=リン説

『千と千尋の神隠し』の登場人物には、ほかにも謎多きキャラクターが何人もいます。油屋で働く少女、リンもその一人。カオナシとリンは同一人物ではないかという説もあるようです。

ところが、カオナシとリンは同時に別々の場所で存在している様子が何度か見られます。

特に後半、千尋を追いかけるカオナシに対し、リンが「カオナシ!千に何かしたら許さないからな!」と敵意を表していることからも、カオナシとリンが同じような存在であるとは考えにくいでしょう。

また、ジブリ公式から発売されている『The art of Spirited away ― 千と千尋の神隠し』という設定資料集には、「リン(白狐)」と記されています。

このことからファンの間では、リン=白狐説が濃厚だと言われており、正体不明のカオナシとは全く別のキャラクターだと言えるでしょう。

結論→カオナシの正体は謎に包まれたまま

ここまでのところ、カオナシの正体はよく分かりませんでした。謎に包まれたミステリアスなキャラクターだからこそ、こんなにも愛され続けているのかもしれませんね。

しかし、もう少しその実態について知りたいところです!続けて考察してみました。

【千と千尋の神隠し】カオナシは「人間の欲」を表現した生物?

カオナシといえば、暴食したり、砂金を使って従業員や千尋を手に入れようとしたりと、人間の欲望を体現したようなシーンが印象的ですよね。他者の欲望を操りつつ、カオナシ自身もまた強欲な性質を持っているのです。

それは、カオナシが寂しい存在であるが故のことなのかもしれません。

食べた者の声を借りることでしか喋ることができないところからも、カオナシが何者でもない抽象的なキャラクターであることがうかがえます。

よってファンの間では、カオナシ=人間の欲そのものだという解釈も存在するのです。

【千と千尋の神隠し】怖いけどなんだか可愛い…カオナシのモデルは実存する人物?

カオオナシは恐ろしい一面を持つ一方、多くのファンに「可愛い」と親しまれていますよね。

カオナシはどこが可愛い?

その理由は、凶暴なシーンとそうでないシーンとのギャップです。

千尋のあとを一生懸命追いかけてきて、電車では隣にちょこんと座ったり、銭婆の家では手芸に精を出したり。

数分前までグロテスクだった生物とは思えないくらい、その行動は健気でほっこりしてしまうものですよね。

そんな一面を知ってしまうと、カオナシがつけている白いお面の表情だけで、なんだか可愛らしく思えてきませんか?

カオナシのモデルは米林宏昌さん?

実はそんなカオナシ、モデルになった人物がいるとの噂があるんです!

その人物とは、当時スタジオジブリに勤めていた米林宏昌さん。映画「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の監督でもあります。

『千と千尋の神隠し』のプロデューサーだった鈴木敏夫さん談では、カオナシのモデルは彼なのだとか。

しかし米林さんご本人が言うところによると、実際は、彼がアニメーターとして描いていたカオナシの絵を見た宮崎駿監督が、「まろ(米林さんのあだ名)にそっくりじゃないか!」と発言したそうです。

直接モデルになったわけではないにせよ、米林さんとカオナシがどこか似ていることは間違いなさそうですね。

【千と千尋の神隠し】カオナシに関して気になること

何もかもがなぞに満ち溢れているカオナシ。気になる疑問は他にもあります。

1.カオナシって千尋のことが好き?

千尋のことを強く求めたカオナシ。カオナシは千尋に恋愛感情があったのでしょうか?

カオナシは何者でもない寂しい存在でしたが、千尋に認識され、優しくしてもらえたことで、千尋を求めるようになりました。

それはあくまでも「承認欲求」や「執着」といった類の感情であり、千尋自身を好きになって追い求めたわけではありません。

その証拠に、銭婆のところで自分のやるべきこと=居場所が見つかってしまうと、すんなりと千尋への執着を見せなくなっています。

カオナシは千尋が好きと言うわけではなく、千尋のくれた優しさや存在意義が欲しかったのでしょうね。

2.現代の若者を表現している?

『千と千尋の神隠し』の監督である宮崎駿さんは、カオナシのことをこう説明しています。

「カオナシは現代の若者なんですよ。趣味として車やバイクを買ったり遊園地に行ったりね。
お金を使うことでしか満たし方を知らない」「カオナシは誰の心にも存在する」

つまり、宮崎駿監督がカオナシを登場させるにあたって、現代の若者をイメージしていたというのは間違いありません。

カオナシは自分の欲を満たすために、偽物の砂金を使って油屋の従業員や千尋を操ろうとしました。そかし千尋は「私が欲しいものはあなたには絶対に出せない」と断ります。

お金では買えないもの、見せかけだけでは手に入れられないものがある……そんなメッセージにも受け取ることができますね。

3.カオナシって神様なの?

千尋が迷い込んだ世界の湯屋「油屋」は、日本の八百万の神様が疲れをいやす場所。そんな油屋に迷い込んでいたカオナシも、神様なのでしょうか?

先ほども言ったように、カオナシは「現代の若者をイメージした」「何者でもない存在」です。

湯婆婆から「とんでもない客」、リンから「化けもん」といった扱いをされていることから見ても、神様とは言えません。

4.初期設定がイケメンだったってホント?

不気味だけど可愛らしい。そんなイメージを持たれているカオナシが、初期設定ではイケメン風だったという話を聞いたことがありますか?

設定資料集『The art of Spirited away ― 千と千尋の神隠し』によると、カオナシの初期イメージは緑や青の体に黒いマントを羽織り、スラリとした体つきで、どこかさわやかな印象です。

また、「後半の主要人物」と走り書きされています。

当初、カオナシは特に目立ったキャラクターではなく、ただの脇役でした。絵コンテを描き進めているうちに、いつの間にか重要なキャラクターになっていったのだといいます。

イケメン風の初期イメージは、宮崎駿監督がカオナシに何か意味を持たせようと思った後に描かれたものなのです。

カオナシが「あっあっ」しか話せない理由

カオナシの最大の特徴ともいえるのは、そのセリフですよね。

基本的には「あ……」「え……」と短い音しか発していません。しかし湯屋の従業員を飲み込んでからは、彼らの声を借りて流暢に言葉をしゃべっていました。

カオナシが発したセリフたちを振り返ってみましょう。

数少ないカオナシのセリフ

「千はどこだ。千を出せ!」

千尋を呼ぶよう要求していたときの台詞です。青蛙の声を借りて叫ぶこのセリフは、カオナシのものまねをする際のセリフとしてもよく取り上げられますよね。

「こっちへおいで。千は何がほしいんだい?言ってごらん」

千尋がやってきて上機嫌になったカオナシは、千尋が欲しがるものを出そうとします。このときは兄役の声を借り、猫なで声で話していました。

「イヤダ……イヤダ……サビシイ……サビシイ……」

ところが、千尋から家へ帰るように諭されたカオナシは、急に苦しそうな様子へと変わります。何者でもないカオナシの本心が漏れたように感じられるセリフです。

カオナシの気になる最後は…

カオナシは千尋についていった結果、銭婆の家を訪れます。意外にも手先が器用だったカオナシは銭婆に気に入られ、彼女の手伝いをすることになったのです。

何者でもなく、帰る場所もなく、無個性だったカオナシは「おまえはここにいな。あたしの手助けをしておくれ」と銭婆に必要とされました。ここでカオナシに存在意義や居場所ができたことになります。

最後はすっかり千尋を求める様子も鳴りを潜め、龍の姿のハクに乗って去っていく千尋を静かに見送るのでした。

人間の欲や無個性を象徴しているのではないかとされるカオナシ。その正体が何にせよ、寂しくて孤独なキャラクターだからこそ、こんなにも人々に愛されているのでしょうね。