1988年の公開以来、世界的な人気アニメ映画として知られる『となりのトトロ』。昭和28年の日本を舞台に、古き良き人々と自然のつながり、不思議な生物のロマンを描いています。
そんな『となりのトトロ』の主人公、サツキとメイには印象的なお父さんがいますよね。知的な雰囲気で名言も多いお父さんは、隠れた名キャラクターとしてファンの間でも高い人気を獲得しています。
今回は紹介するのは、そんなサツキとメイのお父さんについてです。彼がどんな人物なのかを詳しく掘り下げていきます。り深く背景を考えながら『となりのトトロ』を楽しみたい人はぜひチェックしてみてください!
サツキとメイのお父さんはどんな人?詳しいプロフィールをチェック!
名前 | 草壁タツオ |
年齢 | 32歳 |
身長 | 180cm |
職業 | 考古学者・非常勤講師・翻訳者 |
性格 | 無邪気で優しい |
声優 | 糸井重里 |
サツキとメイのお父さんの情報は映画本編で明かされません。本名も年齢も不詳なまま物語が進むため、気になって調べたことがある方も多いでしょう。
『となりのトトロ』の世界観にマッチ!お父さんの名前は草壁タツオ
お父さんのフルネームは「草壁タツオ」です。サツキとメイの苗字が草壁であることが映画で明かされているため、苗字は判明していましたが名前は調べないと分かりませんよね。自然豊かな映画の世界観にマッチした「草壁」という苗字と、少々古風な「タツオ」という名前が印象的です。なかなか名前まで知られることの少ないキャラクターではありますが、この機会に覚えてみてください。
トトロを信じる無邪気さが魅力的!お父さんの年齢は32歳
お父さんの年齢も劇中では明かされませんが、公式から32歳であることが発表されています。これに関しては「思ったよりも若い」という意見があり、その落ち着いた雰囲気や行動に驚くファンが多いようです。32歳という若さで2児の父であること、都心から離れた田舎暮らしを選択することから、かなり大人びた人物であることが分かりますよね。
また、草壁タツオは無邪気さを忘れないという特徴的な一面を持っています。これは意図して描かれた人物像であり、宮崎監督も「父親であって父親でない人物」として彼を描いたと公表しているのです。実際に劇中でもサツキとメイと無邪気に遊ぶ姿や、子供目線で物事を考えようとする姿勢などが素敵だと評価されています。
『となりのトトロ』の時代背景的にお父さんは戦争経験者
『となりのトトロ』は1953年、昭和28年を舞台とした作品です。そのため、草壁一家は終戦から8年の日本を生きていることになります。つまり、お父さんとお母さん、サツキは戦争経験者なのです。戦争が勃発していた当時、サツキは4歳であり、タツオは24歳でした。
本編では明かされていませんが、タツオに従軍経験があっても不思議ではありませんよね。そして草壁家は両親ともに戦争を乗り越えて健在であったため、昭和28年を平和に暮らすことができました。一方の『火垂るの墓』では、主人公の節子と清太が両親を戦争で亡くし、悲惨な生活の果てに亡くなっています。
そして驚くべきことに、サツキと節子は同年に産まれているのです。両親が戦争の生存者であることがいかに子供の命運を分けるかが残酷に描かれていますよね。当時の時代背景を考えると、草壁家は恵まれていた家庭であったことが分かります。
『となりのトトロ』の時代では珍しいイケメン?ムスカに似てる?お父さんのルックスも人気
多くのジブリファンは、タツオの黒縁眼鏡にシャツという知的なコーデと、ハンサムな顔立ちにも注目しています。当時では珍しいインテリ系のルックスなので、イケメンなキャラクターとして劇中でも独特の存在感があるのです。これに関してはタツオの知的な性格や職業が影響していると言えるでしょう。
また、「タツオとムスカの顔立ちが似ている」という意見も散見されますが、これに関して明確なつながりは公式で発表されていません。骨格が似ている、そして28歳であるムスカの4年後の姿がタツオなのではないか、などの考察がありますが、どれも作品の内容を無視したものばかりです。これに関しては完全な都市伝説であると考えて良いでしょう。
『となりのトトロ』は子供を放置しすぎ?お父さんをクズという声も
病気で入院している母親が不在の家庭で、タツオの育児は子供を放置しすぎではないかという意見も散見されます。実際にタツオの育児が問題視されているシーンは以下の通りです。
- 12歳のサツキに自分でお弁当を作らせている
- サツキの通学を気にせず寝坊して朝ご飯も作らない
- 4歳の幼いメイを野外で1人で遊ばせて仕事をする
- 仕事が遅れても連絡せず暗い夜道でサツキとメイを待たせる
以上のシーンが子供を放置しすぎではないか、もっとサポートするべきなのではないか、と批判されています。実際タツオの育児や性格に関係しているかは分かりませんが、サツキは12歳とは思えないほどしっかりとしていて聞き分けの良い子供に成長していますよね。
トトロを呼び寄せた原因?病気持ちのお母さんを気にかける苦労人
さらに注目したいのが、サツキとメイの前にトトロが現れた原因です。トトロは助けを必要としている子供の前に現れると考えられており、サツキとメイは母親不在の家庭環境や、引っ越してきたばかりの不慣れな土地での暮らしなどの原因がトトロを呼び寄せたのではないかと言われています。
タツオも都心で暮らしていましたが、妻の病気を配慮して田舎へ引っ越す選択をしました。つまりタツオは、32歳という若さで2人の子供を抱え、普通水準の生活を維持する苦労人なのです。本人はそのことを気にする素振りを見せずに明るく振る舞っていますよね。子育てに欠点があるとは言え、子供に不安を感じさせない育児の姿勢は高く評価されています。
『となりのトトロ』の劇中で描かれないお父さんの職業は考古学者
劇中で明確に明かされることはありませんが、タツオの本来の職業は考古学者です。実際にタツオが自宅の机に向かって作業をしているシーンでは、卓上に考古学や遺跡の本が積まれています。見逃してしまいそうなワンシーンですが、書斎に縄文土器の写真も飾られており、実は細かくタツオの職業は描写されているのです。
当初宮崎監督はタツオの職業を小説家としており、「もの書きを職としている。一作目の成功で作家生活に入り、今二作目の長編にとり組んでいる。」と語っていましたが、途中から設定を改めました。宮崎監督は感銘を受けた人物のキャラクターを組み合わせ「若い考古学者。大学で非常勤講師をやりながら翻訳の仕事で生活している。今は革命的な新学説の大論文を執筆中。縄文時代に農耕があったという仮説を立証しようと週2回の出勤以外は書斎にとじこもっている。」とし、現在のタツオのキャラクターが完成させたのです。
そしてタツオのモデルとして有名なのが、考古学者の藤森栄一さんです。藤森さんは縄文時代中期の「縄文農耕論」という新たな学説を提唱し、考古学界で注目された人物です。宮崎監督の設定とも一致していますね。このようにタツオが、高学歴で優秀な考古学者として実際の人物をベースに作られた人物だということが分かると、より細部まで『となりのトトロ』を楽しめるでしょう。
『となりのトトロ』に反映される世知辛さ!生活のための仕事は非常勤講師
また、宮崎監督が公表している設定から、タツオが生活のために大学の非常勤講師や、中国語の翻訳の仕事をしていることも判明しています。妻の入院費や治療費、2人の子供を養う生活費を捻出するために考古学者以外にも仕事を掛け持ちしているのです。
実際にタツオが不在の時にサツキが電報を受け取った時も、サツキは東京に電話し、「考古学教室ですか?草壁をお願いします」と言っています。そして次のシーンで学校らしき場所にいるタツオの姿が映るので、劇中でも講師らしき職業は憶測できるのです。
となりのトトロのキャッチコピーも担当!素朴な声で有名なお父さんの声優は糸井重里さん
タツオのセリフはそこまで多くないため、印象に残っていない人もいるかもしれませんが、ファンの間では飾らない素朴な魅力のある声が人気を集めています。その声を担当したのは、コピーライターや作詞家として知られる糸井重里さんです。声優を本職とする芸能人ではありませんが、知的な雰囲気がタツオと似ており、キャラクターデザインと声がマッチしています。
さらに糸井重里さんはジブリ作品のキャッチコピーを数多く手掛けてきた人物としても有名です。糸井さんが手掛けたキャッチコピーは以下の通りです。
- このへんな生きものは まだ日本にいるのです。たぶん。(『となりのトトロ』)
- 忘れものを、届けに来ました。(『となりのトトロ』)
- カッコイイとは、こういうことさ。(『紅の豚』)
- 私はワタシと旅にでる。(『おもひでぽろぽろ』)
- おちこんだりもしたけれど、私は元気です。(『魔女の宅急便』)
- 好きなひとが、できました。(『耳をすませば』)
- トンネルのむこうは、不思議の町でした。(『千と千尋の神隠し』)
- 迷子になろうよ、いっしょに。(『三鷹の森ジブリ美術館』のキャッチコピー)
このように、糸井さんは数多くのジブリ作品に代名詞的なフレーズを授けてきました。そんなジブリ作品の核心に精通している糸井さんの表現力が活きているからこそ、タツオの声は魅力的なのです。
お父さんの声優は棒読み?下手くそ?トトロの世界観に合わないという声も
賞賛の声が多い一方で、中には糸井さんの演技が下手である、棒読みである、という意見も散見されます。特に声の演技を本職とする声優が出演している『となりのトトロ』では、少々その演技差が目立ちやすくなっているのは誰もが気が付くことでしょう。
しかし、宮崎監督は自ら糸井さんを指名しています。実際に「声優さんの声をいろいろ聞いてみたんですけど、みんなあったかくてね、子供のことを全面的に理解している父親になりすぎちゃうんですよ。昔「パパはなんでも知っている」ってテレビあったでしょ、30そこそこの親父がそんなになるはずないんだ。それで、これはどこか別の所から人を連れてこなくちゃいけないって話になりましてね。糸井さんが良いっていったのは、僕です。」と語り、糸井さんの演技だからこそ表現できる父親像があることを示唆しました。
お父さんはトトロに気づいてる?劇中での振る舞いや態度が不思議
無邪気で子供の視点を忘れないタツオは、トトロの存在に気付いていたのではないかとも言われています。実際に劇中で遭遇する不可解な現象やサツキとメイの発言をすんなりと受け入れ、自分なりに解釈している姿も描かれているため、その考察はあながち間違っていないでしょう。
森の主やまっくろくろすけを信じている
タツオは引っ越してきた当初から「まっくろくろすけ」の存在を口にしています。家の中に何かがいると言うサツキとメイを肯定し、その存在を詳しく説明しているのです。好奇心があり、純粋な心を忘れていないタツオは、超常現象や不思議な生物のことも信じられる大人であることが分かります。
そしてメイが1人で遊んでいてトトロに遭遇した時も、「メイはきっとこの森の主に会ったんだ。でも、いつも会えるとは限らない」と発言してメイの主張を信じました。森の主の存在を信じ、その存在を尊いものとして考えているのです。巨大なクスノキの根元にある水天宮の祠に参拝した時には「メイがお世話になりました。これからもよろしくお願いいたします!」と言っています。
メイから届けられたとうもろこしを自然に受け入れる
サツキとメイがネコバスに乗り、遠い七国山病院までとうもろこしを届けたラストシーンでも、タツオはその不可解な現象を受け入れています。本来子供の足では何時間もかかる上に、サツキとメイがやって来ることすら不自然な状況であるにも関わらず、窓辺に置かれたメイのメッセージ入りのとうもろこしを見て不思議がらないのです。
病院の窓辺で「今そこの松の木で、サツキとメイが笑ったように見えたの」と言う妻に対し、「案外そうかもしれないよ!」と言って微笑みます。普通だったら少々気味が悪いと感じたり、驚いたりするようなものですが、タツオは笑って2人の贈り物を受け取りました。このことから、タツオはトトロの存在に気が付いていた、もしくは幼い頃にトトロにあったことがあるのではないか、と言われています。
『となりのトトロ』の核心!お父さんの心に残るセリフ
ここからは、劇中で印象的なタツオのセリフを紹介していきます。
「お化け屋敷に住むのが子供の時からお父さんの夢だったんだ!」
サツキとメイがまっくろくろすけを目撃し、「やっぱりこの家には何かいる!」と騒ぐシーンのセリフです。タツオはまっくろくろすけを気味悪がることもなく、無邪気に喜んで見せます。このセリフにはタツオの無邪気さと純粋さ、子供を怖がらせない優しい配慮が見えますよね。
「ワッハッハッハハッハ。みんな笑ってみな。おっかないのが逃げちゃうから」
引っ越しが終わり、新しいボロ屋と強風に怯えるサツキとメイを楽しませるタツオのセリフです。3人で入浴しながら強風にガタつく家を心配しますが、本来しんみりとしてしまいそうな瞬間ですが、タツオは持ち前の明るさと無邪気さで、それを楽しいものへと変えたのです。