『となりのトトロ』は、1988年に公開された言わずも知れたスタジオジブリの名作アニメーション映画です。日本人であれば誰もが1度は観たことがあるのではないかと言われるほど、老若男女問わず多くに好かれるスタジオジブリの代表作として知られています。
今回は考察していくのは、そんな『となりのトトロ』に不思議な生物として登場するメインキャラクター、「トトロ」の正体。トトロは一体どんな生物でどんな生態をしているのか、スタジオジブリの公式見解や都市伝説をもとに紐解いていきます!
『となりのトトロ』のファンの方や、トトロに関する考察を深めたい方などはぜひ最後までチェックしてみてくださいね。きっと映画に対する解釈や感想も変わってくるはずです!
実は裏設定が満載?トトロのプロフィール
名前 | トトロ(大トトロ・ミミンズク) |
性別 | 不詳(未発表) |
年齢 | 3,000歳以上(1,302歳という説も) |
身長 | 約2m |
声優 | 高木均さん |
トトロは神様にしては可愛らしい風貌をした不思議な生物で、猫とみみずくを組み合わせたような体や顔立ちが魅力的です。神様や聖霊のような不思議な生物ですが、身長も2m前後と比較的小さめ。『もののけ姫』に登場する命を司る神様・シシガミ様が山を越えるサイズなのに対し、トトロは人間に近いサイズの生き物です。
古い作品ならでは!トトロは考察が多いキャラクター
スタジオジブリ作品の中でも古い作品である『となりのトトロ』には、たくさんの考察が存在します。明確な種族や生態が明かされないトトロは、特に考察が繰り返されてきた人気キャラクターです。多くのファンがトトロは精霊なのか?それとも珍獣なのか?とわずかな情報を頼りにその正体を解き明かそうとしてきました。
しかし、宮崎監督や鈴木プロデューサーがインタビューやテレビなどのメディアでトトロの核心に迫るような見解や意見、アイデアを発信するようになってからは、その方向性にまとまりが生まれつつあります。トトロがスピリチュアル的な存在でありながら、実は考えているよりもずっと身近で親しみやすいということが分かりつつあるのです。
中トトロや小トトロは家族?トトロには複数の種類が存在する
『となりのトトロ』の劇中にも登場していため多くの視聴者は知っている情報ですが、トトロには複数の種類が存在しています。劇中に登場するのは真っ白な小トトロと青い中トトロです。大トトロはグレーの色の落ち着いた色をしていますが、小さなトトロたちは若いためかフレッシュな色合いでより可愛らしく描かれています。
劇中では語られませんが、中トトロは「ズク」、小トトロは「ミン」という名前です。ズクは679歳、ミンは109歳だと公式発表され、実際に大トトロより若いことも分かっています。
トトロが利用するネコバスの行き先にまつわる都市伝説も
トトロは劇中で猫の形をしたいきたバス、ネコバスを利用しています。宮崎監督は劇中で、トトロがサツキとめいと並んでバス停でネコバスを退屈そうに待つシーンを描き、トトロが日常的にネコバスを利用していることを表現したそうです。
そんなネコバスには以下の行き先が存在します。
- 塚森
- 長沢
- 三ツ塚
- 墓道
- 大社
- 牛沼
- めい
- 七国山病院
- す
この中で「墓道」という行き先が「めい」の行き先に変わる直前に表示されることから、めいは死後の世界に導かれるべき死者なのではないかという都市伝説が生まれました。ネコバスは死後の世界の導き手であり、めいを探すサツキも死後の世界に送り届けたのではないかと考えられたのです。
また、「七国山病院」の「院」の文字が反対に表示されることも、逆さごとを利用した死の世界の暗示なのではないかと考えられています。逆手の拍手や祈りなどのように死後の世界は現世と反対の作法を行う習慣があるため、それが行き先表示に反映されたという都市伝説です。
サツキとメイは死んでいる?『となりのトトロ』は死後の世界
『となりのトトロ』の劇中では、サツキとめいに影が伴わないシーンがあり、そのことから2人は実は死者であり、作品は死後の世界を描いているのではないかという説も浮上しています。
しかしこの説は公式の見解ではなく、宮崎監督は死後の世界という暗示もメディアで否定しています。鈴木プロデューサーも作画の都合上影を描かなかったと発言しており、スタジオジブリの広報部も正式に否定しました。独特の不思議な世界観が都市伝説を生み出しやすい『となりのトトロ』ですが、宮崎監督は恐ろしい世界を意図して作ってはいないのです。
トトロには怖い都市伝説がたくさん!正体と考えられているもの
『となりのトトロ』は可愛らしい作風に反して、少々意味深で不思議な世界観や演出が特徴的な作品です。そして考察を深めると、それらの要素は怖い側面ばかりが注目され、多くの都市伝説が派生しました。公式が都市伝説と映画の関係性を正式に否定していますが、今一度ここでその内容を確認してみましょう!
トトロはサツキとメイを迎えにきた?「死神」が正体だという説
都市伝説の中でも特に有名なのは、トトロが「死神」であり、実は死んでいるサツキとめいを迎えにきているとうものです。これは劇中でサツキとめいに影がないことや、ネコバスの行き先に「墓道」が存在することから考察された説だと言われています。また、ラストシーンでサツキとめいの姿を母親が見ることができないという展開も、2人の死を暗示していると考えられました。
しかしこの都市伝説に関しては、公式がはっきりと否定しているため、考察としては間違っていると言えるでしょう。宮崎監督も鈴木プロデューサーも、『となりのトトロ』には死を連想させるような意図は全くないとメディアで語っています。
もののけ姫とつながる!トトロの正体は「こだま」だという説
森に古代から暮らす神々ともののけ、人間の争いを描いた『もののけ姫』の世界には、神聖な森に宿る「こだま」という精霊が存在します。そしてそのこだまが時代の流れで姿を変え、やがてトトロになったというのが有名な都市伝説です。
この都市伝説は、鈴木プロデューサーがメディアで語った宮崎監督の「トトロはかつての日本にたくさん存在して人間によって滅ぼされたが、その生き残りが時代ごとに”もののけ”や”幽霊”のように名前を変えながら存在し続けている」というプロットに基づいています。そのため、完全なる噂ではなく、比較的原作に忠実な考察なのです。つまり、こだまとトトロは同じ精霊であり、神様の末裔であることは公式も認める見解と言えます。
トトロは怖い?本当にいる?公式による正体の見解
ここからは、スタジオジブリや宮崎監督、鈴木プロデューサーなどがメディアで発表している見解によるトトロの正体を紹介していきます!
トトロの年齢は3000歳以上!古来より生きる精霊
宮崎監督はインタビューで、「トトロは縄文人から縄文土器の作り方を習った」と話しているため、トトロの年齢は3000歳以上であることが判明しています。1302歳という発表もありますが、こちらは後付けの情報であり、本来のプロットではトトロそのはるか昔から存在する精霊なのです。
一言で言い表せない歴史を背負った神様の子孫
宮崎監督や鈴木プロデューサーが語っている本来のプロットでは、大昔にトトロ族と人間は争い、多くのトトロは滅ぼされ、『となりのトトロ』に登場するトトロたちは生き残りなのです。人間の方が優れていたため、生き残ったトトロたちはひっそりと生きることになり、時代ごとにもののけやおばけ、幽霊などと呼ばれることになったといいます。
つまり現在の人間たちは知らないものの、かつて人間は神聖な森に暮らし、森を守っていたトトロ族を殲滅しようとした訳です。可愛らしい作風とは反する非常に重く殺伐とした設定ですよね。劇中でのんびりと気ままに生きているように見えるトトロですが、実は悲しく残酷な過去を背負った複雑な存在であることが分かります。
岡田斗司夫さんが詳しく考察するトトロの正体
ここからは、プロデューサーや文筆家として有名な岡田斗司夫さんの考察するトトロの正体を紹介していきます。岡田さんは宮崎監督の発言から考察を行っているため、この見解は非常に公式に沿った分かりやすいものとして有名です。
もののけ姫の世界から徐々に減っていった神様の末裔
s実はこの設定には面白い由来があります。『もののけ姫』の製作にアニメーターとして参加した二木真紀子さんが、『もののけ姫』のラストシーンで枯れた原子の森にたたずむ1人のこだまを描き、それを後のトトロという設定にしてほしいと、宮崎監督に提案し、その案を気に入った宮崎監督が採用しました。争い、私利私欲にまみれ、森や神様を破壊してしまう愚かな人間のせめてもの希望として、このこだまの設定は取り入れられたのです。
このことから岡田さんは、トトロはただの可愛い不思議な生物ではなく、重くショッキングな歴史を背負った神様の末裔だと考察しています。つまりトトロ族は自然の失われていく時代の流れで消えていったと考えられがちですが、人間によって世界から滅ぼされた存在なのです。
人間と共存することを覚えた不思議な存在
さらに注目したいのが、トトロの所有物です。名が迷い込んだトトロの寝床である洞には、よく見ると人工的な縄文式土器が存在しています。そしてサツキとめいを夜の空中散歩に連れ出すシーンでは鉄製の大きなコマを回して見せるのです。これに関して宮崎監督は、トトロは縄文人に縄文土器の作り方を習い、江戸時代に遊んだ少年からコマを習った、と語っています。
このようにトトロは人間の生活を観察し、時に人間と関わりを持って共存することを覚えた不思議な精霊なのです。そして『となりのトトロ』ではサツキから傘をもらい、それを楽器のように使って遊びます。トトロは人間から享受した道具を自分なりの使い方で生活に取り入れています。かつて滅ぼされた神様や精霊の末裔としてひっそりと共存を「学んだ」と考えると、トトロの複雑なバックグラウンドが見えてきますよね。
『となりのトトロ』が伝えたいことは全ての大人の「忘れもの」
トトロは実は可愛いだけでなく、人間と自然の繰り広げてきた苦い戦いの歴史や悲劇を背負った左音材ですが、宮崎監督はそんなトトロを通して「忘れていたもの。気づかなかったもの。なくしてしまったと思い込んでいたもの。でもそれは今もあるのだと信じて『となりのトトロ』を心底作りたい」と企画書の上で述べています。
さらにメディアでは「自分が今まで無視してきた、日本の自然に対する感謝と愛情を表現したい」とも語りました。つまりトトロは、忘れていた、見落としていた自然や生き方を取り戻してくれるような、神秘的で優しい側面を持つ存在として作られたのです。この見解を知ると、「このへんないきものは、まだ日本にいるのです。 たぶん。」や「忘れものを、届けにきました。」というキャッチコピーの深さがよく分かりますね。