【魔女の宅急便】原作小説で描かれるその後をネタバレ!

魔女の宅急便

1989年に公開された『魔女の宅急便』。ジブリで初めて他者の原作を使用した、長編アニメーション作品です。主人公のキキが故郷を離れ成長する物語は、今も色褪せることなく世界的に愛され続けています。悩みながらも自立した生活を送るキキ。その姿に自分自身や自分の子どもを重ね合わせ、涙を流した人もいるのではないでしょうか。

今回は『魔女の宅急便』の映画版では語られない「その後」についての解説です。登場キャラクターのその後や、作者が激怒したと噂される小説と映画の違いまで、徹底的に解説していきます。是非最後まで見ていってくださいね!

原作小説で描かれる物語のその後とは?

映画版『魔女の宅急便』では、最後に松任谷由実さんの「やさしさに包まれたなら」の曲が流れます。曲とともに画面に映るのは、映画のその後です。キキと空を飛ぶトンボや、赤ちゃんが生まれたおソノさん。映画に出てきたキャラクターたちは、みんな自分の知人のような気持ちになり、微笑ましいですよね。

エンディングは両親への「私、この街が好きです」の手紙で締めくくられています。映画を見終わり、心が満たされ、映画の「その後」に想像をふくらませた方も多いのではないでしょうか。原作小説で描かれるその後を一緒に見ていきましょう。

キキはトンボと結婚する

キキはトンボとの恋を実らせ、見事ゴールインします。魔女の宅急便ファンからすると、願っていた嬉しい結末ですよね。しかし、結婚までは決して平坦な道のりではありませんでした。トンボが遠方の学校に通うため、2人は遠距離恋愛を始めることに。そんな中、キキはトンボに恋心を抱きますが、トンボの態度ははっきりしません。キキの心が揺れ動く中、2人の恋を邪魔するキャラクターまで登場します。そんな困難を乗り越えて、最後にはめでたく結ばれました。

双子の子ども・ニニとトトを出産する

キキはトンボとの間に双子の子どもを授かります。名前はニニとトト。ニニは生意気でおてんばなお姉ちゃんで、トトは物静かで読書家の弟です。

伝統が嫌いなニニは、魔女になるか悩み、途中でやめたっていいんでしょ?となかなか腹をくくりません。魔女の宅急便でお馴染みの黒服を嫌がり、パンツ姿にサングラスでホウキに乗る練習をします。一方、魔女になりたいのになれない、トト。人知れず思い悩み、こっそりホウキで空を飛ぼうとチャレンジするものの飛べません。

対極にある2人ですが、それぞれ悩みを抱え過ごす姿は、13歳のキキと同じですね。

35歳のキキは子どもの旅立ちを見守る

第6巻まで続く原作小説。クライマックスで描かれているのはそれぞれの旅立ちです。悩んだ結果、魔女として故郷を離れる決意をしたニニ。その姿は、おソノさんやトンボが驚くほどキキにそっくりでした。弟のトトは、「自分だけの魔法」を探しに旅立ちます。魔女の宅急便の作中で、魔法は「才能」という意味合いで出てきました。トトは自分の才能を探す旅に出かけたのでしょう。

そして35歳になったキキはそんな2人を母として見送る立場に。原作は、2人の後ろ姿でクライマックスを迎えます。読んだ人がさらにその続きを読みたいと思う素敵な終わり方です。

みんな大好き!ジジやトンボ、ウルスラのその後を考察

ここまで原作小説で紹介される、物語のその後を説明してきました。ではみんなに愛されるキャラクターたちは映画の「その後」どうなっていくのでしょうか。ここからは魔女の宅急便で登場した主要キャラクター3名のその後について、それぞれ解説していきます。

ジジはリリーと結婚18匹の子猫のパパになる

ジジは映画のエンドロールで4匹の可愛らしい子猫と登場します。映画版のジジは「今行く」の言葉を最後に喋れなくなり、その後も言葉を発することはありません。しかし、原作ではジジはまた話せるようになるのです。

ジジは、原作でも白猫のリリーと結ばれ、パパになりました。子猫の数はなんと18匹!かなりの大所帯なので、ジジファミリーだけでも1つの物語が作れるかもしれませんね。

トンボは街を離れる

トンボは空を飛びたい男の子で、飛行クラブに所属しています。映画の「その後」、トンボが興味を持ったのは生物学です。トンボは生物学を学ぶため、コリコの街から離れた学校に通うことに。生物学に夢中なあまり、口から出るのは虫の話ばかり。デート中にキキを怒らせるなんてストーリーも登場しました。

トンボは23歳でキキと結婚し、双子の父親になります。そして職業は、パイロット・・・ではなく生物学の教師です。原作でのトンボは大人しく、研究熱心なオタク気質の男の子。映画が公開された当時、パーティーボーイがモテました。そのためキャラクターのイメージを変更したのでは、と考察する声もあります。

ウルスラはキキとジジの絵がきっかけで有名になる

森の中に住む絵描きの少女・ウルスラは、映画ではキキが落ち込む重要な局面で登場しました。しかし、原作小説では、キキのいちお客さんとしての位置づけで、多くのことが語られていません。

小説では、キキがウルスラの作品を、展覧会の会場まで空を飛び運ぶストーリーがあります。ホウキに乗って絵を運んでいるところをたくさんの人に見られ、キキは一躍有名人になりました。また、その時の絵のモデルはキキとジジで、ウルスラの絵は見事入賞するのです。ウルスラが絵にかけていた情熱と、キキの人生の節目にウルスラの存在があったことは、映画との共通点といえますね。

作者が激怒?原作小説と実写映画の違いとは

映画の『魔女の宅急便』を見て、原作の作者・角野栄子さんが激怒したという噂があります。実際のところ、激怒とまではいかないですが、原作小説と内容が違いすぎて、少し揉めた事実があるそうです。

角野栄子さんは当初、映画を制作するにあたり、1つだけ注文しました。それは、「キキが旅立つ時にキキの故郷の木に付けられていた鈴を鳴らすこと」。しかし、制作が進むにつれて内容が大きく変わることに否定的になったそう。今では実写化、漫画化されるほど人気の『魔女の宅急便』。皆さんの知っている作品は、角野栄子さんと宮崎駿監督が数回対談し、解決して出来た作品です。ここからは原作とどういった点が違ったのかを解説していきます。

ロングヘア魔女の可愛いラブストーリー

主人公・キキの特徴は、真っ赤な大きいリボンとショートカットの髪型です。しかし、原作小説でのキキは、ロングヘアーに黒リボンの女の子。どうしてそのような変更があったのでしょう。魔女の宅急便の方向性について、プロデューサーの鈴木敏夫さんが「思春期」を題材にしようと提案したそう。その時、思春期と聞いた宮崎駿監督は、紙ナプキンにマジックペンで大きなリボンを描きました。そして「このでかいリボンがこの娘を守ってるんだ。それが思春期じゃない?」と一言。独特の発想から大きなリボンを採用したそうです。

また、魔女の宅急便は、観た人に勇気を与えてくれる作品ですよね。しかし、角野栄子さんは「もっと可愛いラブストーリーになると思ってた」と少しがっかりした様子だったそう。実際、原作小説ではキキの恋愛に触れるシーンが多くあります。その反面、映画ではトンボとは最後まで「仲のいい友達」です。映画も素敵ですが、原作も読んでみるとまた違った楽しみ方ができるかもしれませんね。

先輩魔女はホウキで飛ぶのが苦手だった!

キキが故郷を出てから最初に出会った先輩魔女。少し上から目線で「あなたも頑張ってね」と言い自分の街に降り立った魔女です。実は彼女、ホウキで飛ぶのが苦手な設定でした。「静かに飛ぶのが好きなの」とホウキで飛ぶことを余裕で楽しんでいた姿から想像がつきません。ちなみに原作小説では、先輩魔女の他にも数名の魔女が登場します。それぞれ自分の得意なことを生業として生きていく姿に勇気をもらえますよ。

あの泣けるシーンは映画のオリジナル

映画版『魔女の宅急便』のクライマックスでは、デッキブラシに乗ったキキが、飛行船から落ちそうになったトンボを助けます。スランプに陥ったキキがそれを乗り越え、成長したシーンに、感動した人も多いのではないでしょうか。映画の中でも特に印象的なシーンですね。実はあのシーンは、映画版の完全オリジナルで制作されています。クライマックスの大切な場面をオリジナルで制作なんて角野栄子さんもさすがに驚きますよね。